横浜市都筑区の小児科、児童精神科のこどもの木クリニック

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第3回:ワクチン
 

ワクチン

今回は、ワクチン=予防接種の話です。ワクチンは沢山ありますが、まず総論としてワクチン全般の話です。

日本は先進国?

まず、皆さんに質問です。日本は先進国だと思いますか?
今はG20、少し前はG7。経済的に世界をリードしている国の首脳が集まる会議で、日本は最初からそのメンバーでした。過去20年の世界の国のGDP(国民総生産)を見ると、日本は常に世界の上位です。円は安定した通貨として、世界から認められています。経済的には、日本は間違いなく先進国です。では、ワクチンに関しては、どうでしょうか?世界のワクチン専門家そして小児科専門医の中では、日本は「ワクチン後進国」と言われています。いわゆる先進国の中では、日本の予防接種制度は、最低レベルなのです。

ワクチンは義務?

日本はすべてのワクチンが「義務規定」ではなく「努力義務規定」になっています。つまり、予防接種を「義務として」確実に実施させる規則が日本にはありません。
アメリカでは、重要なワクチンは「義務」になっているので、アメリカの公立学校の条件には「必要とされる予防接種を受けていない者は、入学を許可しない」とされています。日本から留学するときに、慌てて予防接種をする人がたくさんいるのもそのためです。

ワクチンの無料化 ヒブ、肺炎球菌、水痘、B型肝炎

日本が後進国と言われる、第2の理由は、ワクチン接種の無料化の遅れです。
他の国では無料で接種できて、日本では無料で接種できないワクチンがたくさんあります。罹患する人が大変多いロタウイルス、おたふく風邪のワクチンが、無料化されていないことは問題です。いくら良いワクチンであっても、みんながそれを受けないことには、その病気の被害も減りません。子供の健康と命を守るためには、ワクチンの無料化がとても大切です。
ヒブワクチンは2008年12月から、小児肺炎球菌ワクチンは2010年2月から使用できることになりましたが、定期接種になったのは、2013年からです。水痘ワクチンは、2014年、B型肝炎が定期接種になったのは、2016年からです。

定期接種

皆さんは「定期接種」と「任意接種」という言葉を聞いたことがあると思います。定期接種は、自治体が接種費用を負担する「努力義務規定」に入っているもので、「任意接種」は、自費で接種するものとなっています。「努力義務規定」ということは、あくまで努力であって義務ではないという立場です。
被害が大きいインフルエンザワクチンは、アメリカでは多くの州では無料で受けられます。以前と較べると、無償化が進んできていますが、他の欧米諸国と比べるとまだまだ本当の「先進国」と呼べるレベルではありません。

ワクチンとは何でしょうか?

私たちが自分を守るために「免疫」という仕組みが体にはあります。細菌やウイルス(それらを抗原と呼んでいます)が体の中に入ってくると、抗原に対しての自分の体はそれを記憶して、2回目に入ってきた時に素早くそれを排除する機能(抗体)を作り出します。この仕組みを利用して、自分の体にあらかじめ「抗体」を作って、抗原に素早く対処できるようにするために開発されたのが「ワクチン=予防接種」です。
体の中に抗体を作るために、細菌やウイルスをそのまま体に入れてしまうと病気になってしまいます。それでいくつかの方法によって、病気にならずに抗体を作ることにしたのがワクチンです。
ワクチンには、2つのタイプがあります。生ワクチンと不活化ワクチンです。

生ワクチン

生きた細菌やウイルスなどの病原体を十分に弱めて、体に害が無いようにしたのが生ワクチンです。接種すると、軽くその病気にかかったような状態になり、その病気に対する抗体ができます。以前は、1回で抗体が十分量できると考えられていましたが、実際には1回の接種では、抗体の量が十分ではない場合も多く、2回接種が必要なものも少なくありません。

不活化ワクチン

細菌やウイルスを殺して、免疫をつけるのに必要な成分だけを取り出す操作をして作ったものが不活化ワクチンです。破傷風のトキソイドは、細菌の出す毒素を基にして作った不活化ワクチンです。接種しても、細菌やウイルスそのものを入れるわけではないので、病気にかかったような状態になることもありません。その意味では、生ワクチンより安全といえます。ただし、1回の接種では十分な量の抗体を作ることはできません。ワクチンによっては、3回も4回も追加で接種する必要があります。また、追加免疫をしても抗体は長い間に少なくなってくるので、何年かおきに追加接種をした方がいいものもあります。

何故ワクチンを受けるのでしょうか?

ワクチンを受ける目的としては、大きく3つが挙げられます。

  1. 自分が病気にかからないようにするため。
  2. 病気に罹っても、症状が軽く済む。もしくは、重症の合併症にかからないようにするため。
  3. 周りの人にかからないようにするため。

1.から説明します。まず、ワクチンを受ける年齢を考えてみましょう。日本では普通の場合、生後2か月からワクチンを受け始めます。それは、乳幼児にはいくつかの感染症を除いて細菌とウイルスに対する免疫がないからです。病気によっては、確実な治療法がなく、重症の合併症を引き起こすものが少なくありません。また、治療法があったとしても、正しい治療をしても確実に治る保証はありません。細菌やウイルスの中には、「この薬は絶対に効く」と言われている薬に対して、抵抗性のあるものも多いのです。「薬剤耐性の肺炎球菌」とか「薬剤抵抗性のウイルスの変異」という言葉を聞いたことがあると思いますが、細菌やウイルスも学習をして、今まで効いていた薬が効かなくなってくることはよくあることです。

2.について説明します。僕が経験して、身に染みてその危険性を実感した患者さんがいました。MR(はしかと風疹)の予防接種を受けていなかった中学生の女の子がはしかにかかり、間質性肺炎という合併症になりました。肺の組織は肺胞を呼ばれる小さな袋の集まりです。ちょうど蜂の巣のような形をイメージしてもらえば分かりやすいと思います。この、肺胞が壊されて行くのが間質性肺炎です。肺胞の役目は、ガス交換と言って、空気の中の酸素を取り込んで二酸化炭素の排出することです。この肺胞が壊れてくると、酸素の取り込みが十分にできません。この女の子は、呼吸が苦しくなって肺移植をしなければならなくなりました。結局、移植も上手くいかずに亡くなりました。

3.については、自分の周りの大切な人を守るということです。熱が高かったり、咳がひどかったりと明らかな症状がある場合には、保育園、幼稚園、学校には行かないでしょうし、人混みには出ないと思います。でも、病気には潜伏期というものがあります。その病気にかかっていても、症状が全く出ない時期です。例えば、水痘は水を含んだ皮疹が出て初めて「水ぼうそう」と診断されますが、皮疹が出る1~2日前から人にうつしてしまう危険があります。友達と一緒に遊んだ場合、その時点では分かりません。集団の中にそのような子が一人いた場合は、集団でかかる危険があります。
成人の風疹の流行が去年話題になりましたし、小規模ですがはしかの流行もありました。1歳以下の子どもはワクチンもしていないので、全く無防備の状態です。接触して罹患した場合には、重症の合併症にかかる危険もあります。
そして、集団の中には病気で免疫が十分にない人、妊婦、高齢者も沢山いる可能性があるので、自分がワクチンを打つことで、そのような人たちへの感染源になることを防ぐことは大切です。

ワクチンは安全ですか?

ワクチン接種はWHO(世界保健機構)がその安全性を確認しています。
欧米では、積極的に科学的調査が行われて論文が沢山出されていて、その安全性が証明されています。実際、明らかにワクチンとその副作用との関係が証明され、ワクチンの副作用でその病気に罹った、そして重大な後遺症が残ったというのは「ポリオの生ワクチン」だけです。日本もかつてポリオのワクチンは生ワクチンでしたが、今は不活化に変わっています。
日本ではワクチンの副作用として大きな話題になって、未だ積極的な接種が行なわれていないワクチンとして「子宮頸癌ワクチン」があります。接種後に原因不明の痛みを訴える事例があったことを機に、2013年から積極的な接種を中止しました。これに対しWHOの専門委員会は2015年に「現時点でワクチン接種推奨に変更があるような安全上の問題は確認されていない」という声明を発表し、日本を名指しで非難しました。2019年の3月の段階で、日本ではまだ積極的な接種の再会はされていません。

アレルギーがある場合、ワクチン接種はどうするか?

まず、アナフィラキシーといって、ワクチン接種後に血圧が急に下がり、意識がなくなって倒れるようなショック症状あった場合は、同じワクチンは接種できません。
ワクチンの成分でアレルギーと関連した報告があるのは、ワクチン主成分、安定剤のゼラチン、防腐剤のサロメチール、鶏卵成分、抗菌薬です。
アレルギーが関係している可能性のある病気、例えばアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、などの場合は、通常接種可能です。
鶏卵そのものを使って製造されるワクチンはインフルエンザと黄熱があります。鶏卵を食べたとアナフィラキシーを起こした病歴がある場合は、接種できません。鶏卵アレルギーがあったり、卵白に対する特異的IgE抗体が陽性でも、卵の加工品を食べて大丈夫な場合は接種可能です。
鶏胚細胞由来の、麻疹、MR、おたふく風邪、狂犬病については淡白の精製量がきわめて少ないので、鶏卵アレルギーがあっても接種可能です。

同時接種について

生まれて間も無い乳児は、免疫力が弱く、この時期にかかると重症になる病気がたくさんあります。病気に対してワクチンで防げるものが増えました。ヒブ、小児肺炎球菌、ロタウイルス、4種混合ワクチンのような1歳以下の子供たちに接種するものは、2回から3回打たないと確実な免疫ができません。そして、この時期の子供たちが罹りやすい病気に対しては、早く免疫をつける必要があります。1回に1つしか打たない場合には、免疫がつくまでの大変長い時間がかかります。アメリカでは2ヶ月の時に、6本のワクチン接種が行われています。同時接種の安全性も、10年以上の経験から証明されています。

妊娠中、もしくは授乳中のワクチンについて

妊娠中の全ての生ワクチンは、胎児への影響を考慮して、全妊娠期間を通じて原則禁止となります。
不活化ワクチン、トキソイドは、胎児に対して影響が少ないと考えられ、接種可能です。ただし、妊娠初期は、自然流産の可能性も高い時期であるため、接種は禁止ではありませんが、避けた方が良いとなっています。授乳中のワクチン接種は、乳児に与える可能性はありません。

ワクチンの接種間隔が乱れた時はどうする?

原則は「受診した時点で、遅れている残りの接種を再開する。その後も残りの接種回数を、通常通りの決められた間隔で接種していく。最初からやり直しをする必要はない。ということです。
不活化ワクチンを何回も追加接種していくのは、ブースター効果を得ることが目的です。免疫の記憶というものは通常、必ず残っているものと考えて構いません。遅れに気づいた時に遅れた分の追加接種を行えば、その時点で通常と同様のブースター効果が期待できます。

大人のワクチン

2018年夏頃から風疹の流行が首都圏からはじまり、横浜も警戒警報が出ました。患者さんの大部分が30~50代の男性で、今年に入ってからも報告きています。横浜の感染病センターからの詳しい報告はまだありませんが、東京都感染症情報センターから詳しいデータが出ています。
去年の患者さんは東京都だけで、950人です。年齢別にみると30~50代がピークで、男性が9割以上を占めています。
ワクチンの接種状況を見ると、「接種なし」と「不明」がほとんどです。風疹は2回接種になっていますが、2回打った人はほとんどいません。
風疹は、妊娠初期の女性が罹患すると、胎児に影響が出ます。そして厄介なことに、不顕性感染が少なくないことと、発疹の出る2-3日前から感染力があります。そして風疹の感染力は、インフルエンザの5倍と言われていいます。
ワクチンを積極的に受けてください。MRワクチンがお勧めです。理由は、風疹ワクチンを受けていない人や、1回だけの人では麻疹ワクチンの接種回数も不十分で、麻疹に対する抗体も弱いことが多いからです。本当にかかった人でも、3回以上の接種によるマイナスはありません。

まとめ

  1. 病気の予防においてワクチンは安全です。
  2. ワクチンは決められた回数を打つことが大切です。
  3. 大人も積極的にワクチンで予防してください。



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